ある歯科医

2022.06.15
 
以前ある歯科医が遠方からやって来た。
噛み合わせについて、自分でも苦労しているとのこと。
話を聞いていると、随分と恐縮している感じ。


そんなに恐縮しなくてもいいですよ。私は大した人間ではないですからと言った。

歯科医が噛み合わせに悩んでいるなんて、あまり人に言えませんから。
それに一度の施術で本来の噛み合わせを取り戻したという話を聞いていますし、そんな人に歯科医はまともに会えませんよ。


もしかしたら、噛み合わせに何か歯科医の気がついていない事があるのかもと思って来ませんでしたか。

その通りです。もしあれば是非教えてくれませんか。

おしえることは出来ませんが示唆することは出来ますよ。

口腔内の歯の働きは咬むという垂直
運動ですが、前後左右に動かしているのは歯ではありません。


えっ、では歯の形状が歯の噛み合わせに関係ないと仰ってるのですか。

歯の形状によって歯の垂直運動が変化しますので歯を削ったりつくり替えたりしますが、それではいつまでたってもイタチの追いかけごっこのようになります。

その通りです。ではどうすれば良いのでしょう。
それと先程の噛み合わせを前後左右に動かしているのは何でしょうか?


公然の秘密なのですが、口腔の中で歯を左右に動かしているのは舌で、前後に動かしているのは、口の前後の動きです。

では舌や口を何らかの方法で調整するのですか?

いえ、そんな事をしても収まらないでしょう。

では、どうするんですか。

歯と舌、口運動、つまり口腔全体の場を同時に調整します。

そんな事ができると私たち歯科医の敵になりますよ。

トンデモナイです!
歯科医の造ったしっかりとした歯をより生かすのが私の仕事であり、それ以上ではありません。


では今の現状を伺い、場を調整した後また、お話を致しましょう。
2022.06.15 11:25 | 固定リンク | 思いついた事

 

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